従業員から役員にならないかと誘われることもありますが、個人的には他人の会社で「安易に」役員になるべきではないと考えます。
役員は制約がある
役員は従業員とは違う立場です。
会社の所有者である株主から経営を委託されている立場ですから、会社との「やり取り」には役員のいいようにしてはならないという制約があります。
「やり取り」には様々なものがありますが、最も影響が大きいのは報酬(給料)でしょう。役員は報酬を年に一度しか変更することができません。(定期同額給与)
今期は利益が多くなりそうだから、「役員の報酬を途中から倍に増やして…」というようなことは、「お手盛り」になってしまうので出来ず、今期の役員報酬は、今期が始まるときに決めないといけないのです。
多くの中小企業はオーナー企業ですから、オーナーと社長が同一人物です。そのため、制約を受けてもあまりある恩恵があるのです。しかし、従業員が役員になっただけだと、恩恵はほぼ無いにもかかわらず、制約はキッチリついてきます。
役員は従業員の特典は無い
役員は従業員ではありませんから、労働者として保護されていてた権利がありません。
従業員であれば、労働時間を超過して勤務すれば残業代がありますが、役員にはありません。労働力を提供しているわけではないので納得です。
労働者は仕事を失うと失業保険を受け取れますが、役員は失業保険がありません。繰り返しますが、労働者ではないわけですから、「雇用」保険(失業保険)を受け取るのはおかしいわけで、これも辻褄が合っています。
また、労働者は労働中の災害による負傷等について給付を受けられる、いわゆる労災があります。これも、役員は労働ではありませんから、労災も無い。
更に、会社が倒産すると従業員の給料というのは優先的に支払われるものなのですが、役員の給料(つまり役員報酬)は、その対象ではありません。自分で潰しといて報酬くれってのも変な話で、他の債権者に払うのが当然でしょうから、これもわかる話です。
残業代もつかず、失業保険もなく、労災もない。会社が倒産しても、役員報酬の支払いは後回しというのが、役員です。
解任リスク
役員は会社の所有者である株主から委託を受けて会社の運営をしています。
ということは、株主から不適当と認められれば解任されることもあります。
従業員であれば、よほどのことをしない限り、いきなりクビということは少ないですが、役員は「理屈上は」いきなりクビがあり得るのです。
多くの会社は、オーナーと社長が同一人物ですから、解任されることはないのですが、他人の会社に勤めていて、役員になった場合には、その限りでありません。
役員は責任が重い
難しい法律的な話はさておき、役員には果たすべき責任があります。
責任を果たすためには、会社のことをキッチリと理解しておく他ありません。
他人の会社で、そこまでキッチリと会社のことを知ることができるのでしょうか。
やはり責任を負うのであれば、自身の会社の方がいいわけで、他人の会社で役員になるというのは、よく考えてからの方が良さそうです。