税理士を探すときに、「自社の業種に詳しい税理士がよい」と考えることがあります。
自社の業種に詳しければ、取引や慣習にも詳しく、自社のことをよくわかってもらえそうだ、というのが理由でしょう。
しかし、取引や慣習に詳しいことと、自社の内情を深く把握することはイコールではありません。
とりわけ、規模の小さな会社においては、個別性が強いため、同じ業種であっても、経営や取引の形が大きく異なります。
そのため、業種経験のある税理士であっても、自社の事業内容や取引を説明し、理解してもらう必要があります。

業種専門の税理士が選ばれる理由
業種専門の税理士には、次のようなメリットがあります。
- 業界で使われる言葉が通じやすい
- 一般的な取引や経理処理を知っている
- 業種特有の制度や許認可に詳しい
- 起こりやすい税務上の問題を予測しやすい
医療、社会福祉、建設などの分野や、国際取引を主体に行う会社では、「税務以外」の制度や許認可が複雑な面もあるため、「当初の」打ち合わせが円滑になるなどの差があるでしょう。
税務以外の相談を重視するのであれば、業種経験は税理士を選ぶ一つの判断材料になり得ます。
同じ業種でも会社の実態は異なる
一方で、中小企業は「個別性」が強く、業種名はあくまで大きな「括り(くくり)」のようなもので、事業実態は千差万別です。
同じ「美容室」という括りでも、経営者一人で業務を行う店舗と、従業員を雇い、物販や付随サービスまで行う店舗とでは、お金の流れが異なります。
確認すべき問題も、現金やキャッシュレス売上の管理、人件費、商品の在庫、設備投資、借入金の返済など、それぞれ違ってきます。
税務や経理の処理についても同じです。
たとえば、サロンで使用するシャンプーであっても、施術のために使用するものと、顧客に販売するための商品とでは処理が異なります。販売しているように見えても、委託販売であれば、契約内容によって売上として計上する金額も変わります。
必要なのは、「美容室だからこの処理」という業種ごとの答えではありません。
「お金の流れ」と実際の「財やサービス」との対応関係について、帳簿や請求書などの原始資料を確認するだけでなく、経営者から取引の流れを聞き取り、「実態に即した」会計処理と税務判断をすることが重要なのです。
業種経験より実態把握能力
業種経験は、税務以外の業界特有の事情などを話すときには有用です。
しかし、税理士が適切な税務判断を行うためには、その会社の実態を的確に把握する必要があります。その過程で、その会社固有の税務・経理上のリスクや経営課題も見えてきます。
税理士に必要なのは、幅広い業種や業態について素早く全体像を把握し、どこに税務・経営上のリスクや課題があるのかを見つける力です。
業種についての知識は必要ですが、最終的な判断を左右するのは、その会社の実態をどこまで正確に捉えられるかです。
他の顧問先の非公開情報は利用できない
業種専門の税理士であれば、同業他社の売上、利益率、給与水準、仕入先などを教えてもらえるのではないかと期待する方もいるかもしれません。
公表されている統計や、個別企業を特定できない一般的な傾向であれば、参考にできる場合があります。
しかし、税理士には守秘義務があります。他の顧問先から知った非公開情報を、別の顧問先に提供することはできません。
それに、個別性の強い中小企業では、同業他社との比較だけでなく、自社の過去実績や今後の計画との比較が重要です。
その意味でも、自社の実態を継続して把握していることの方が有用な場合があります。
小さな会社が税理士選びで確認したいこと
税理士の顧問先数や特化している業種はHPなどからわかっても、「実態把握の深さ」までは分かりません。
実態把握の深さを確認する方法の一つが、具体的な相談事項を持って単発相談を利用し、実際に話してみることです。(いきなり顧問契約を結ぶ必要はありません)
税理士を試すためだけに利用するのではなく、具体的な問題を相談するなかで、何を確認し、どのように結論を出すのかを見ることができます。
面談時には次のようなことを確認すると良いでしょう。
- 経営者が相談した問題に対して、的確な回答があるか
- 必要な資料を確認したうえで、関連するリスクや課題も指摘できるか
- 初回の打ち合わせでも、事業の構造をある程度大づかみに把握できているか
経営者が欲しいのは、業界全体に共通する大きな提言ではなく、その会社の実態を把握したうえでのリスクや課題の指摘、対応策です。
また、起業時には、早い段階で税理士へ相談した方がよい問題がある一方、最初から顧問料を負担することには、費用面や心理面のハードルがあります。
その場合には、相談は最初から利用し、継続的な対応が必要になった段階で顧問契約を検討してもよいでしょう。
当事務所は会社の規模と課題に着目しています
当事務所は、特定の業種だけを専門としていません。
業種ごとの一般的な特徴は踏まえますが、それをそのまま個々の会社に当てはめることはしません。
専任の経理担当者を置かない小規模企業について、実際の契約、取引、入出金の流れを確認し、税務・経理・資金繰り上の問題を早めに把握することを重視しています。
業種によって会社を限定するのではなく、会社の規模と抱えている課題に着目した税理士事務所です。
また、顧問契約を前提としない単発相談も行っています。
自社の業種に詳しい税理士を探しているものの、相談したい問題が本当に業種特有のものなのか分からない場合には、まず具体的な取引や状況をお聞かせください。
小さな会社にとって本当に重要なのは、業種に詳しいことは、会社を理解する入口になります。しかし、小さな会社にとって本当に重要なのは、業界知識の量だけではなく、自社の実態を正確に把握し、固有のリスクを見つけられる税理士を選ぶことです。

