私は、現在の税理士に大きな不満がなければ、原則として変更しない方が合理的だと考えています。
しかし、変えたほうが良いのに、さまざまな理由から変えないままで、不利益を被っているケースもあります。
この記事では、税理士を変更しなくてもよいケース、変更したほうがよいケースを整理します。

税理士を変更した方がよいケース
次のような場合には、税理士の変更を具体的に検討した方がよいでしょう。
怒鳴る、高圧的で相談できない
税理士は、経営者の適切な税務申告をサポートする立場です。
そのため、「税務上のリスクが極めて高い取引」を進めようとしている場合には、強い注意喚起を行うこともあります。
しかし、怒鳴ったり、高圧的な態度を取るなどは本末転倒です。
税理士と経営者は、会社の状況や税務判断に必要な情報を共有する必要があるため、税理士の反応を恐れて重要なことを伝えられない、あるいは冷静な話し合いが出来ない状態では、適切な申告や判断にも支障が生じます。
単に話し方や性格が合わないという問題ではなく、業務に必要な意思疎通ができないのであれば、関係を続けるのは難しいでしょう。
税務上の重要なミスを繰り返す
税務申告や届出などで重要なミスを繰り返し、十分な説明や改善もない場合です。
税理士も人間ですから、ミスが一度あっただけで直ちに変更すべきとは限りません。重要なのは、ミスの内容、その後の対応、再発防止が行われているかです。
会社の税額や権利に影響するミスが何度も繰り返され、今後も安心して任せられないのであれば、変更を検討する理由になります。
不満がなくても変更が必要になる場合がある
税理士の引退・死亡・廃業、税理士事務所の統合、会社の代表者交代などにより、変更が必要になることもあります。
また、会社の規模や事業内容、経理体制が変わり、現在の税理士では必要な業務に対応できなくなる場合もあります。
この場合は現在の税理士を評価するというより、今後の会社に必要な対応を基準に、新しい税理士を探すことになります。
すぐに変更せず、様子を見てもよいケース
不満があっても、現在の税理士との調整によって解消できる場合があります。
税理士から提案がない
「税理士から積極的な提案がない」という不満は、しばしば目にします。
しかし、会社の事情を十分に確認せず、設備投資、借入れ、節税策などを一方的に勧めることが、必ずしもよい提案とは限りません。
最終的に経営判断を行うのは経営者です。税理士には、経営者との打合せを通して、
- 税務上どのように扱われるか
- 資金繰りにどのような影響があるか
- どのような選択肢があるか
- それぞれにどのようなリスクがあるか
などを整理する役割があります。
提案の数ではなく、相談した際に必要な判断材料が得られるかで考えた方がよいでしょう。
試算表が遅い
試算表が届くのが遅い場合も、原因を確認する必要があります。
税理士事務所の処理が遅い場合もあれば、会社から資料を渡す時期が遅い場合もあります。また、契約内容によっては、毎月ではなく数か月ごとの作成を前提としていることもあります。
毎月必ず試算表が必要とは限りません。納税、融資、設備投資などの判断に必要な時期までに数字を確認できるかが重要です。
顧問料が高いと感じる
顧問料は、会社の規模、取引量、資料の状態、打合せ頻度、依頼する業務によって変わります。
依頼者側は簡単な取引だと思っていても、実際には確認集計に時間がかかる取引もあるため、
金額だけを比較すると行き違いが生じやすいです。
現在どのような業務を依頼し、税理士側でどのような確認や検討が行われているのかを確認してから判断しても遅くありません。
必要のない業務が含まれているなら契約内容を見直し、より多くの対応を求めるのであれば、報酬が上がることも受け入れなければなりません。
税理士を変更する前に考えたいこと
現在の不満と新しい税理士への要望は明確か
まず、現在の税理士に何を不満に感じ、新しい税理士へ何を求めるのかを具体的にします。
- どのような相談をしたいのか
- いつまでに数字を確認したいのか
- 税理士本人の対応を求めるのか
- 打合せはどの程度必要か
- 納税、資金繰り、融資まで相談したいのか
- 経理処理をどこまで任せたいのか
要望が曖昧なままでは、新しい税理士へ変更しても同じ不満が生じる可能性があります。
現在の税理士へ具体的な改善を依頼していないのであれば、まず相談してみるのも一つの方法です。
予算と会社側の受入体制は整っているか
税理士へ求める対応を増やせば、通常は報酬も上がります。
毎月打合せをしたい、早く試算表を作ってほしい、資金繰りや融資まで相談したいという要望があるなら、そのための予算も必要です。
また、会社側にも、
- 必要な資料を期限までに提出する
- 不明な取引について説明する
- 打合せの時間を確保する
- 経理方法の改善に協力する
- 重要な取引を事前に相談する
といった対応が求められます。
税理士だけを変更しても、会社側の経理や情報共有が変わらなければ、数字が早く完成するとは限りません。
現在、税理士がいない場合
これまで一度も税理士へ依頼したことがない場合も、考え方は基本的に同じです。
税理士がいないからといって、必ず契約しなければならないわけではありません。自社で経理や申告ができ、税務や経営上の判断にも困っていなければ、そのまま続けることもできます。
逆に、規模に関わらず、経理や資金繰り、税務申告に不安を抱えている。判断や考えを整理するための相談相手が必要などであれば、税理士と接点を持っておいた方が良いでしょう。
これまで税理士へ依頼していなくても、過去の申告書、総勘定元帳、届出書、会計データなどは、新たに依頼する税理士へ渡す必要があります。
顧問税理士は長く付き合ってこそ分かることもある
税理士も、契約した直後から会社のすべてを理解できるわけではありません。(適切な税務申告を行うことと、会社を取り巻く状況や社長の考え方を理解することは別です)
特に最初の2~3年は、
- 経営者が何を重視しているか
- どのような判断をする人なのか
- 売上から入金までの流れ
- 季節による売上や資金繰りの変化
- 取引先や金融機関との関係
- 過去の税務処理や経営判断
などを確認しながら関係を作っていきます。
長く関与するほど共有できる前提が増え、会社特有のリスクや変化にも気付きやすくなります。
頻繁に税理士を変更すると、この蓄積がその都度リセットされます。小さな不満だけで変更を繰り返すことが、会社にとって得になるとは限りません。
一方で、長い付き合いや紹介者との関係だけを理由に、相談できない状態を無理に続ける必要もありません。
必要な判断が遅れる、税務上の問題が改善されない、経理体制が整わないといった状態が続けば、現在の関係を維持すること自体が機会損失になります。
新しい税理士の選び方と引継ぎ
新しい税理士を選ぶ際には、報酬や事務所の規模だけでなく、次の点を確認します。
- 実際に誰が担当するか
- 打合せの頻度
- 数字が完成する時期
- 対応してもらえる業務
- 質問や相談の方法
- 追加料金が発生する業務
現在の税理士との契約を終了する前に、新しい税理士の対応可否や条件を確認しておいた方が安全です。
変更時には、決算書や申告書だけでなく、総勘定元帳、固定資産台帳、届出書、会計データなども引き継ぎます。
必要となる資料については、次の記事で詳しく整理しています。
まとめ
怒鳴る、重要な税務上のミスを繰り返す、必要なときに連絡が取れないといった状態であれば、税理士の変更を具体的に検討した方がよいでしょう。
一方、提案がない、試算表が遅い、税理士本人と会えない、顧問料が高いといった不満は、契約内容や会社側の対応を見直すことで解消できる場合があります。
税理士を変更する前に、
- 現在何に困っているのか
- 新しい税理士へ何を求めるのか
- 必要な報酬を負担できるか
- 会社側も経理や情報共有を改善できるか
を整理することが重要です。
顧問関係には、長く関与することで蓄積される情報や理解があります。その価値も考慮しながら、現在の関係を続けることと、変更によって得られるものを比較して判断しましょう。



