中小・中堅企業の経理の現場では、弥生会計に代表される「会計ソフト」で日々の取引を記録集計しています。会計ソフトに入力する前に紙の伝票に取引を書いてから入力するという場面も目にすることがありますが…
振替伝票はいらない
結論から言いますと、振替伝票を手書きで作成することに意味はありません。作成しなくても、いわゆる原始証憑(領収書や請求書など取引の記録となる原始資料のこと)から直接会計ソフトに入力すれば良いのですから。
パソコン会計を導入したばかりだと、ついつい昔からの流れで振替伝票を起票してしまう方が多いのですが、すっぱりやめた方がいいでしょう。
①原始証憑を確認→振替伝票を起票する→それを見て会計ソフトに入力をする
②原始証憑を確認→会計ソフトに入力をする
②のほうが一手間減っている分作業が効率化されます。これだけでも、振替伝票をやめる価値はあるかと思います。
さらに効率化を進めれば、原始証憑の一部データを会計ソフトに連動させる(たとえば預金データなどを会計ソフトに取り込む)などがありますが、まずは紙の振替伝票をやめるところからでしょう。
振替伝票をなくす場合、原始証憑から直接会計ソフトへ入力するので領収書などの整理が大事になります。以下簡単に領収書の整理のポイントを。
領収書の整理
領収書は法律で保管が義務付けられています。無くさないように、スクラップブックなどに整理して貼付けましょう。
ただ、貼り付けがめんどくさい場合には無くならないようにファイルなどに保管しておくのも良いでしょう。
領収書は日付順に並び替える必要はありません。しかし、前期と当期のものが混ざるというような「期」が違うものが混在しないように気をつけましょう。(日付順に並び替えなくても、会計ソフトは自動的に内部で日付順に並び替えます。ですので、領収書はだいたい日付が若ければ十分でしょう)
経理の場面では、日付順よりも支払いの種類別に整理するほうが効率的です。例えば、現金払い・預金払い・クレジットカード払いといったようにです。(預金から振り込んだのか、現金で支払ったのか、クレジットカード支払いかが不明な領収書がごちゃ混ぜになっていると判別に時間がかかるうえに重複してしまうリスクがあります)
領収書の整理が先か会計ソフトの入力が先か
領収書の整理を先にするべきか、会計ソフトなどへの入力を先にすべきか迷うところです。まず、領収書を日付順に大雑把に並べ替えてクリップなどで留めておきます。必要に応じて、支払いの種類ごとや通帳ごとなどに分けると入力が非常に楽です。
次にクリップで留めてある領収書をもとに会計ソフトや現金出納帳(記帳しているのであれば)などに入力や記帳をします。
入力が済んだ後で、クリップ止めしてある領収書類をスクラップブックなどに貼付けていけば良いのではないでしょうか。入力後に領収書類を貼付けながら内容を確認すれば、入力漏れも相当防げます。
領収書の貼付けはナーバスにならないで
あまり神経質になって、キッチリやり過ぎないようにしましょう。結局、領収書類を確認するのは、税理士か税務署くらいのものです。それ以外では、ほとんど確認することはありませんので、最低限分かりやすければいいです。
支払先の名前、取引の内容、日付、金額などが確認出来るようになっていればいいので、神経質にならず貼付けて下さい。
領収書からだけでは、取引の内容が良く分からないものもあります。そういったものについては、メモのようなカタチで領収書に取引の内容を記しておくと、会計ソフトに入力する際に大変助かります。
過去の日付の領収書などが後から見つかることもあります。その場合は、気にしないでそのまま綴りましょう。先に述べたように、会計ソフトが自動的に並べ替えますので重複にだけ注意すればよいでしょう。
必要な時はソフトから打出せる
仕訳を一個一個確認したいので、振替伝票がどうしても必要だという場合には、会計ソフトから振替伝票形式で出力すれば良いのです。
税務調査のときに振替伝票が必要になると思っている方も多いようですが、振替伝票を確認はしません。取引は元帳などから分かりますし、原資記録から取引がきっちりと会計ソフトに入力されており、申告がきちんとなされていればいいのです。
紙の伝票が必要なとき
自動販売機で来客のためのお茶を買った、電車の切符を買った、葬式などで香典を支払った…という場合には領収書をもらえないことがほとんどです。(もらえないこともないですが、現実的でなかったり非常に手間がかかったり)
「領収書がないと経費にできない」という誤解があります。もちろん領収書がないものばかりになると問題ですが、領収書がもらえない場合には、その事実を客観的に証明できれば経費とできることもあります。
先述の支出も領収書をもらえないものばかりですが、そんなときは出金伝票を作成するというのも一つの手段です。出金伝票はいわばメモのようなものですから、出金伝票でなくても構わないのですが、備忘録としては有効でしょう。
出金伝票だけでなく、たとえば葬式であれば、案内状などそのような事実があったことを証明する書類なども一緒に残しておくと(税務調査の場面などで)経費として認められやすくなるでしょう。
Excelを活用することも
会計ソフトは直接データを入力するだけでなく、Excelに入力したデータを取り込むこともできます。(少し知識が必要ですが)
会計ソフトだけで管理をするのが難しかったり、少しハードルが高く感じるような場合には、Excelに必要なデータを入力し税理士などにExcelからデータを取り込んでもらうよう依頼してもいいでしょう。
いらない習慣はやめよう
振替伝票に限らす、経理作業の多くは「昔からやっているからやっている」ということが多いようです。(実際、なんのために作っているのかよくわからない資料を伝統的に作成している会社も見かけます。)
実際のところ本当に必要な作業や工程はそんなに多くなく、大多数は他のことに置き換えられたり、省略出来たりします。
経理作業の効率化を図りたいなーと考えていらっしゃる経営者や経理担当者の方で、まだ振替伝票をつけてらっしゃる方は、まず振替伝票をやめてみることからはじめてみてはいかがでしょうか。