税理士に資料を渡す際、「何をどこまで用意すればいいのか」と迷うことはないでしょうか。
税理士に必要となる資料は、単に領収書や通帳だけではありません。
顧問契約を始める場合、決算や申告を依頼する場合、税理士を変更する場合では、必要となる資料が少しずつ異なります。
この記事では、税理士が経理・決算・申告の際に確認することが多い資料を、カテゴリ別に整理します。
小規模企業や経理担当者がいない会社でも確認しやすいように、資料の目的や注意点もあわせて解説します。

税理士に渡す資料は、依頼内容によって変わる
税理士に渡す資料は、大きく分けると次のようなものがあります。
日々の経理処理に必要な資料。
決算や申告を行うために必要な資料。
会社の基本情報を確認するための資料。
税理士変更時に、過去の処理を引き継ぐための資料。
記帳代行を依頼する場合は、通帳、請求書、領収書などの原始資料が中心になります。
一方で、すでに経理処理がされている会社であれば、会計データ、総勘定元帳、決算書、申告書などの確認が中心になることもあります。
また、税理士を変更する場合には、現在の事業年度だけでなく、過去の決算書や届出関係も確認する必要があります。
したがって、税理士に資料を渡す際は、「何を処理してもらうのか」「どこから関与してもらうのか」によって、必要資料が変わると考えておくとよいでしょう。
預金・決済関係
税理士に見せる資料として、最も基本となるものが預金や決済に関する資料です。
会計データは、要するにお金の動きを記録したものです。
そのため、預金口座や現金の動きが分かる資料は、経理処理の出発点になります。
金銭出納帳
現金の出入り(出納)を記載した帳簿です。帳簿といっても、紙の帳簿の場合もあれば、Excelなどで入出金の記録をつけたものもあります。
預金出納帳
預金の出入り(出納)を記載した帳簿です。
金銭出納帳と同じく、紙の場合もあれば、Excelなどのデータ形式の場合もあります。
預金通帳、当座照合表、ネットバンクの明細
預金出納帳がある場合には、その記載が正しいかを確認するために、預金通帳や当座照合表を確認します。
預金出納帳がない場合には、通帳やネットバンクの明細をもとに、預金の動きを整理します。
近年では、紙の通帳ではなく、ネットバンクの入出金明細データをやりとりすることも多くなっています。
その場合でも、一定期間しか明細をダウンロードできない金融機関もあるため、必要な期間のデータは早めに保存しておく必要があります。
クレジットカード明細、決済サービスの明細
事業用のクレジットカードを使っている場合は、カード明細も必要です。
クレジットカード払いの場合、利用日、支払先、金額、引落日が分かれているため、預金通帳だけでは取引内容を確認できません。
カード明細と領収書・請求書を照合して、内容を確認します。
また、飲食店、小売業、EC販売、サービス業などでは、クレジットカード決済、電子マネー、QR決済、決済代行会社の明細も重要です。
売上から決済手数料が差し引かれて入金される場合、通帳に入金された金額だけを見ても、本来の売上や手数料が分からないことがあります。
そのため、決済会社の管理画面や明細資料も確認する必要があります。
請求書関係
売上、仕入、外注費などについて請求書がある場合には、それらを確認します。
記帳代行として経理データの作成を税理士に依頼している場合は、請求書のコピーやPDFデータを税理士に渡すことになります。
請求書は、事業上のやりとりで必要になることも多いため、基本的には原本を渡すのではなく、コピーやPDFデータを渡す方がよいでしょう。
請求書
経理担当者が請求書を集計している場合には、売上帳、仕入帳、外注費一覧など、集計されたデータを確認します。
決算時には帳端と呼ばれる、締め日以降決算日までの売上、仕入の確認がなされるため、特に重要です。
売掛帳、買掛帳
掛取引を行っている場合に、掛代金が正しく決済されているのかを確認するために、売掛帳や買掛帳を確認します。
これらは、様々な作成方法があるためExcelの場合もありますし、専用のソフトなどのデータを確認することもあります。
売掛金が残ったままになっている場合、単なる入金漏れなのか、回収遅れなのか、請求の誤りなのかを確認する必要があります。
買掛金についても、支払い漏れや二重計上がないかを確認します。
売上日報
日々売上が発生する商売の場合、売上日報やレジから打ち出されるジャーナルなどから、売上が適切にカウントされているか確認します。
とくに現金売上、カード売上、掛売上などが混在するような場合、売上日報と入金資料を照合する必要があります。
決済代行・ECモール・ネット販売の売上明細
ネット販売を行っている場合は、Amazon、楽天、BASE、Shopifyなどの売上明細や、決済代行会社の明細も必要です。
ECや決済代行では、売上金額、手数料、送料、ポイント、返品、キャンセルなどが混在することがあります。
そのため、銀行口座に入金された金額だけでは、売上や手数料の内訳が分かりません。
ネット販売をしている場合は、売上管理画面から出力できる明細や、月次レポートを保存しておくと、経理処理がしやすくなります。
売買契約書、工事契約書など
商売の形態によっては、売買契約書、工事契約書、請負契約書などが売上や仕入を証明する資料になります。
特定の業種では、請求書だけでは取引内容が分かりにくいことがあります。
契約書を確認することで、取引内容、金額、納期、支払条件、成果物の内容などを把握できます。
売上計上のタイミングや、前受金・未収入金の判断にも関係します。
支出関係
支出については、まず「実際に支出があったのか」を確認する資料が必要です。
支出があったうえで、それが経費になるかどうかを判断します。
そもそも支出の事実が確認できないものを、経費として処理することはできません。
領収書等
金銭出納帳や預金出納帳が作成されている場合には、そのうち経費関係の内容を精査するために。
金銭出納帳や預金出納帳が作成されていない場合には、これらを作成するために確認します。
経費性の有無、消費税の区分・税率、摘要との整合性などは、調査対策の観点からも確認が必要です。
なお、クレジットカード明細だけでは、取引内容が十分に分からないことがあります。
カード明細は支払先と金額を確認する資料にはなりますが、何を購入したのかまでは分からないことがあります。
そのため、カードで支払った場合でも、領収書、レシート、請求書などは保存しておく必要があります。
固定資産関係の資料
多額の支出をした場合、それが一度に経費になるのか、数年間にわたって経費化するのかは、取引内容によって変わります。
そのため、契約書、見積書、請求書、領収書などを確認し、取引内容を精査します。
車両、機械、備品、内装工事、ソフトウェア、不動産などを取得した場合は、固定資産として処理するかどうかの判断が必要になります。
車両などであれば、支払った金額全てが車両となるわけでなく適切な科目へ振り分ける必要もあります。
リース契約も同様のため、詳細が分かる資料は残しておきましょう。
すでに事業を行っている会社や、税理士を変更する場合には、固定資産台帳や減価償却明細も必要です。
過去に取得した資産が残っているか、減価償却が正しく行われているかを確認するためです。
棚卸表、在庫一覧
商品や材料を扱う事業では、決算に伴い棚卸表や在庫一覧も必要になります。
一般的な小規模企業では、期中に棚卸しは行いませんが、期中でも大まかにどのくらいの在庫があるのかは把握できていると利益予想や納税予想の精度が大きく上がります。
保険証券等
保険は本来の目的である「もしもの備え」という以外に、節税などに利用されやすいという理由から、税務上はその取扱が厳しく監視されています。
処理が複雑になりがちなため、保険証券等により全てが経費になるのか一部だけなのかなどを確認します。
償還表、借入関係資料
償還表は、借入金の各回における返済額の内訳を示した資料です。
借入金の返済額は、元本と利息の合計です。
会計処理では、元本部分は借入金の返済、利息部分は支払利息として処理するため、それぞれを分ける必要があります。
また、決算書には、どこの金融機関からいくら借入金があるのかを示す必要があります。
そのため、償還表は重要です。
借入をした場合には、償還表だけでなく、金銭消費貸借契約書、保証料の明細、条件変更や借換えに関する資料も確認することがあります。
特に、保証料が一括で差し引かれている場合や、借換えをしている場合には、通帳の入出金だけでは処理内容が分かりにくいことがあります。
賃貸借契約書
事務所、店舗、倉庫、駐車場などを借りている場合には、賃貸借契約書が必要です。
支払ったお金には、家賃、前家賃、敷金、礼金、仲介手数料、保証料などが含まれることがあります。
これらは、それぞれ会計処理が異なるため、契約書を確認して、適切な科目に振り分ける必要があります。
また、事務所や店舗などを誰から借りて、いくら支払っているのかは、決算書や申告書の作成にも関係します。
専門家との契約書
税理士、社会保険労務士、弁護士、司法書士、コンサルタントなどと契約している場合には、その契約書や請求書を確認します。
誰に、いくら支払っているのか。
源泉徴収の対象になる支払いかどうか。
顧問料なのか、単発の業務報酬なのか。
このような点を確認するためです。
特に、個人の専門家(カメラマンなど)に対する報酬については、源泉徴収が必要になる場合があります。
そのため、契約内容や請求書の確認が必要になります。
その他
毎回確認するわけではありませんが、会社の基本情報や社内ルールを確認するための資料もあります。
会社の根本に関わる資料ですので、変更があった場合や、税理士が新たに関与する場合には確認が必要です。
定款
会社の基本ルールを定めたものが定款です。
会社の目的、商号、本店所在地、決算期、株式に関する事項などが記載されています。
税理士が関与する最初の段階では、定款を確認することがあります。
特に、決算期は申告期限や税務処理に関係するため、確認を怠ることはできません。ますから、確認を怠るわけにはいきません。
謄本
登記事項を記した書類です。
会社名、本店所在地、役員、資本金、目的などが記載されています。
登記に変更があった場合には、確認が必要です。
法人税では、役員との取引について厳しいルールがあります。
そのため、誰が役員なのかを確認することは重要です。
また、資本金の額は、税金の計算や申告内容に影響することがあります。
増資や減資があった場合にも注意が必要です。
さまざまな規程
会社はルールで運営されます。
そのため、どういった社内ルールがあるのかを知らないと、正確な税務処理ができないことがあります。
たとえば、旅費規程、慶弔見舞金規程、役員報酬に関する決議、退職金規程、賞与規程などです。
すべての会社にこれらの規程があるわけではありません。
ただし、社内ルールに基づいて支給しているものがある場合には、その根拠となる規程を確認する必要があります。
株主名簿、議事録、許認可関係資料
会社の状況によっては、株主名簿、株主総会議事録、取締役会議事録などを確認することがあります。
役員報酬の変更、役員退職金の支給、増資などを行う場合には、議事録が必要になることがあります。
また、許認可が必要な事業を行っている場合には、許認可関係の資料を確認することもあります。
事業内容を把握するために、会社案内、パンフレット、ホームページ、契約書などを確認することもあります。
税理士を変更する場合に追加で必要となる資料
すでに別の税理士に依頼していた場合は、通常の会計資料に加えて、過去の申告内容や会計処理を確認するための資料が必要になります。
税理士を変更する際には、できれば次の資料を3期分用意しておくと、引き継ぎがスムーズです。
- 決算書
- 法人税、消費税、地方税などの申告書控え
- 勘定科目内訳書
- 法人事業概況説明書
- 総勘定元帳
- 固定資産台帳、減価償却明細
- 税務署、都道府県、市町村へ提出した届出書・申請書関係
- 可能であれば会計データ
- 税務署などから届いた通知書、納付書、ダイレクト納付や電子申告に関する情報
過去3期分があると、処理の継続性を確認しやすくなります。
たとえば、売掛金、買掛金、未払金、借入金、役員借入金、役員貸付金、固定資産、消費税の処理などは、過去からの流れを見ないと判断しにくいことがあります。
また、消費税の届出関係は特に重要です。
課税事業者か免税事業者か、簡易課税を選択しているか、インボイス登録をしているかなどは、申告内容に直接影響します。
会計データについては、税理士側の使用ソフトやデータ形式によって、そのまま利用できる場合とできない場合があります。
そのため、会計データがあれば望ましいですが、あわせて決算書、申告書、総勘定元帳のPDFや紙資料も用意しておくと安心です。
税理士変更時には、前任の税理士から何を受け取ればよいか分からないこともあります。
その場合でも、まずは決算書、申告書、総勘定元帳、届出関係を中心に確認するとよいでしょう。
税理士を変更するときは、過去の会計データや資料が整理されているかどうかで、引き継ぎのしやすさが大きく変わります。
日頃から経理フローや入力ルールを整えておくことは、税理士変更時の負担を減らす意味でも重要です。
従業員がいる場合に必要となる資料
従業員がいる場合には、給与関係の資料も必要になります。
具体的には、次のような資料です。
- 給与台帳
- 源泉徴収簿
- 源泉所得税の納付書控え
- 年末調整関係資料
- 住民税の特別徴収関係資料
- 社会保険料、労働保険料に関する通知書
- 雇用契約書、労働条件通知書
- 退職者がいる場合の退職関係資料
給与計算を税理士が行うかどうかにかかわらず、給与関係の資料は税務処理に関係します。
役員報酬、従業員給与、賞与、退職金、源泉所得税、年末調整などは、法人税や所得税の処理にも影響します。
なお、従業員がいない会社であっても、法人で役員報酬を支払っている場合には、源泉所得税の納付状況を確認する必要があります。
そのため、従業員がいる場合だけでなく、役員報酬を支払っている法人でも、給与・源泉所得税関係の資料は整理しておいた方がよいでしょう。
資料を渡すだけでなく、数字を確認できる状態にする
税理士に必要な資料を渡せば、会計処理や申告作業は進められます。
ただし、資料を渡すことと、その数字を経営判断に使える状態にすることは別です。
資料が揃っていても、利益がなぜ出ているのか、資金繰りがなぜ苦しいのか、借入金の返済にどれくらい余裕があるのかまでは、資料を提出しただけでは分かりません。
小規模企業の場合、経理担当者がいないことも多く、資料の整理そのものが経営状態の整理につながります。
資料を出すだけで終わらせるのではなく、そこから試算表、決算書、資金繰りをどう読み取るかまで確認しておくと、税務申告だけでなく、今後の経営判断にも役立ちます。



