長期前払費用がおかしい

会計的にトンチンカンな決算書はちょくちょく見かけます。「投資その他の資産」は特に変なのを見かけます。

税金の計算には関係ない

決算書は「貸借対照表」と「損益計算書」という書類が中心になっています。

貸借対照表は、決算日現在の資産や負債などがどのくらいあるのかを示した書類。資産は会社にお金をもたらすもの、負債は会社がお金を払わないといけない義務です。

損益計算書は、一会計期間(通常は1年間)の儲けを表す書類です。

会社が払う主な税金は法人税と消費税で、いずれも損益計算書を中心に計算を行い、貸借対照表はあまり関係ありません。ですから、中小企業の貸借対照表は「会計的に」おかしいものが散見されます。

会計的には貸借対照表も重要

経済が右肩上がりの時代ですと、売上がどのくらいあるのかが会社を判断する目安となったため損益計算書が重視されていました。

ただ、現在では経済が右肩上がりではなくなってきたため、会社の価値が重視されはじめ、価値を表すのは貸借対照表ですから、こちらも重要視されます。

ところが勉強が足りない税理士などは、そういった会計のことに疎く、貸借対照表がおざなりになっています。

貸借対照表は税金自体にはほとんど影響がないため、会計に疎い税理士は、結果としてトンチンカンな貸借対照表を作っていることがあります。

・流動と固定の分類

貸借対照表は、資産と負債を集計した書類ですが、その配置や並びにも意味があります。
一般的には流動性配列法と呼ばれる並べ方を採用しているのです。
簡単にいえば、資産はお金に変わりやすいものから順に並べ、負債は支払いの近いものから順に並べるという考え方です。

資産でいうと、お金に変わりやすいものは「流動性」が高いといえます。
逆にお金に変わりにくい、換金しづらいものは流動性が低い(固定性が高い)ということです。
貸借対照表であれ損益計算書であれ、会社の状況をわかりやすく簡潔に報告するための書類ですから、そういったルールが定められているのです。

そして、ルールに従って作られていないと、税金の申告では困らなくても、会社の価値も重視する融資やM&Aなどで困るでしょう。

長期前払費用は…

長期前払費用とは、前払費用のうち費用化されるのが1年を超えるものをいいます。

お金を払ったけれど、まだ費用にならないものが前払費用です。

そのうち長期間にわたるものだから、事務所などを賃借した際の礼金(一定額以上)とか、保証協会を絡めて融資を受けたときの信用保証料などが、よく見かけます。
信用保証料を例にとると、融資を受けた際に融資の期間分の保証料をまとめて支払います。7年ならその期間分をまとめて前払します。

そして、期間が経過するごとに経過した分だけ費用になります。
費用になる期間が長いので、長期前払費用なので、「投資その他の資産」という区分に表示されます。

が、テキトーに作られた貸借対照表だと、長期前払費用とせずに単なる前払費用として流動資産に計上していたり…と、無茶苦茶です。

経営者も、決算書について簡単で構わないですから、作成した税理士に説明を受けるようにした方が良いでしょう。