預り金を管理しない会社

預り金という勘定科目がありますが、重要な科目であるにもかかわらず、しっかりと管理されている会社は意外と少ないです。

「預り金」とは

「預り金」とは、会社が支払いなどを行う際に一定の金額を天引きして「預かって」おき、のちに会社が代わりに支払うものです。

源泉所得税、社会保険料、雇用保険、住民税などが代表的なものです。

例えば源泉所得税は、従業員に給料を支払う際に一定の金額を天引きし(預かって)、従業員に代わって会社が支払います。

預り金は会社が負担していない

先ほどの源泉所得税ですが、「負担」しているのは従業員です。

仮に従業員の給料が20万円だとして、源泉所得税が1万円ならば、給料日に従業員に支払うのは20万円-1万円=19万円を支払います。

1万円は会社が預かっておいて、後日に従業員に代わって会社が支払います。

会社は預かったものを代わりに払うだけだから、得も損もしていません。(会社にとっての得や損はダイレクトに税金に関わってきますから決算に際しては、キチンと分類する必要があります。)
「預かっているだけ」という理屈がわかっていないと、預り金の管理がしっかりとできないのです。

実際には、源泉所得税は給料以外にも発生しますし、給料についても天引きして預かるのは、源泉所得税以外にも社会保険料、雇用保険、住民税などがありますから、もっと複雑なやりとりになります。

社会保険料はもっとややこしい

社会保険料はもっとややこしいです。

それは、社会保険料は従業員と会社が「折半して」負担するものだからです。

仮に従業員の給料が20万円だとして、社会保険料の従業員負担分が2万円ならば、給料日に従業員に支払うのは20万円-2万円=18万円です。

2万円は会社が預かっておいて、従業員から預かったその2万円と、会社が負担する2万円を合わせて合計4万円を後日支払います。

この4万円を、まるまる会社の費用だと勘違いしてしまうミスが多く、資金繰りなど②狂いを生む原因です。

支払うタイミングがズレる

また、預り金は支払うタイミングが分かりづらいのも、その難しさを大きくしている原因です。

源泉所得税であれば預かった翌月の10日まで、社会保険料は預かった翌月末まで(会社によって経理が違う場合があります)に支払います。

預かって→支払って→…というサイクルが上手く回っていれば分かりやすいのですが、経理が雑になってくると、このサイクルが乱れるため、そんな雑な経理をする人には分かろうはずも有りません。

適切に管理しないと

預り金は、会社が負担すべきものではありません。別の人が負担すべきものを預かっているだけですから、その管理が杜撰だと「使い込んだ」か「正しく天引きしていない」ことになり、いずれにせよ非常に問題です。

預り金がきちんと管理されている会社は、経理だけでなく労務もキチンと管理されている印象を受けますし、実際そうなのですが、管理されていない会社は、杜撰だということが透けて見えるわけです。

他人のものをしっかりと「預かれない」会社にはそれなりの報いがあり、税務調査などで厳しく罰せられます。