経理のサイクルは1ヶ月単位で回るものが多いため、「月次」単位で管理することは有効です。
ただ、「月単位で管理すること」は「試算表を毎月作成すること」を要求するものではありません。
小規模企業では、記帳に使えるリソースが限られているため、「翌月10日までに毎月完成させる」でなく「2~3か月ごとの確認」でも充分なケースも多くあります。
大切なのは毎月作ることではなく、必要な時期に判断へ使える数字を確認できることです。(ただし、作成頻度を下げた結果、必要な判断に間に合わなかったり、暫定的な数字を決算時の数字と同じように扱ったりすることには注意が必要です。)

月次試算表は毎月作らなくてもよい
「月次試算表」の「月次」は、実務上、取引データを月ごとに区切って集計することを意味します。毎月その都度、試算表を作成・確認しなければならないという意味ではありません。
経理は1か月のサイクルで動く業務が多いため、月ごとにデータを区切ると、管理や比較がしやすくなります。
したがって、自社の状況に応じて2~3か月分をまとめて記帳・確認しても、取引が各月へ正しく記録されていれば、月ごとの推移を確認できます。
適切な作成頻度は、企業の売上規模、取引量、数字の変動幅・バラツキ、今後の予測のしやすさなどによって異なります。
月ごとに利益が大きく変わり、その予想が難しいケースでは、毎月確認する意味があります。
一方、売上や経費が比較的安定し、請求額、支払予定、預金残高などから直近の状況を把握できる会社では、2~3か月ごとの確認でも足りるでしょう。
普段は2~3か月ごとに確認し、融資や設備投資などの重要な判断がある場合に、その時点で臨時に数字をまとめる方法も考えられます。
速報と試算表の役割は異なる
試算表を毎月作成しないと、「業績や資金繰りの変化を把握できないのでは?」と思われますが、請求事務や支払・預金残高、業績予測から大まかに把握可能です。
試算表は、取引を一定のルールで記帳・集計し、会社全体の利益や財務状況に加えて、「認識していた状況に大きな間違いがないか」「会社全体がどのような状態にあるか」を一定の精度で確認するものです。
速報で兆候をつかむことと、試算表で集計・検証することは、分けて考える必要があります。
月次試算表とは

月次試算表とは、期首から各月末までに記帳した取引を、勘定科目ごとに集計した書類です。
そのため、月次試算表は、貸借対照表と損益計算書に対応する項目を表示するため、決算書の「簡易版」と考えられることもあります。
しかしながら、決算書と異なり小規模企業の月次試算表では、棚卸し、減価償却、引当金、経過勘定などを毎月すべて反映しないことがあります。
ですから、試算表は「決算書の簡易版」というよりは、その時点での『暫定的な』数値をまとめたものと見たほうが実態に近いのではないでしょうか。
あくまで『暫定的』であるため、月次試算表の数値と本決算の数値は完全には一致しないことに留意して見る必要があります。
試算表は単体ではなく推移で見る
当月の試算表だけを見ても、その数字が良いのか悪いのかは判断しにくいため、比較のうえ『相対的な』判断が必要です。
そこで、各月ごとの数字を横に並べた「推移表」に加工すると、急な増減や通常とは異なる動きを見つけやすくなります。
また、前月だけでなく、前年同月や事業計画と比較することで、季節的な変動なのか、計画から外れているのかも判断しやすくなります。
異常値を見つけたら元帳を確認する
推移表で急な増減・異常値を見つけても、試算表には勘定科目ごとの合計額しか表示されていないため、その原因までは分かりません。
その場合は、該当する勘定科目の総勘定元帳を開き、内訳となる仕訳や摘要を確認します。
例えば、外注費が急増していれば、一時的な支出なのか、継続的な支出なのか、入力間違い(勘定科目のミスなど)や二重計上がないかを確認します。
異常値には、実際の事業活動による変化だけでなく、記帳間違いや処理漏れが原因のものもあります。
試算表で変化を見つけ、元帳で原因を確認するという流れです。
決算予測と対応につなげる
試算表を確認する目的は、数字を見ることではなく、『その後の判断』に利用することです。
現在までの実績に今後の売上や経費の見込みを加え、決算時の利益、法人税等、消費税、借入金返済、納税後に残る現預金などを予測します。
そのうえで、価格や経費の見直し、売掛金の回収、納税資金の確保、設備投資や節税策などを検討します。
試算表に表示された過去の数字だけでなく、このまま進んだ場合に決算時点でどうなるかまで考えることが重要です。
誰が作るかより判断に使えるかが重要
試算表は、自社で記帳して作成しても、税理士などへ記帳を外注して作成しても構いません。
自計化には早く数字を確認しやすいメリットがあり、外注には社内の負担を減らせるメリットがあります。
重要なのは、誰が入力するかではなく、無理なく継続でき、必要な時期までに一定の正確性がある数字を確認できることです。
自計化と外注の選び方については、別記事「記帳は自分でするか、外注するか」で詳しく解説しています。
まとめ
小規模企業では、月次試算表を必ず毎月作成する必要はありません。
売上や経費が比較的安定している会社では、2~3か月ごとの確認でも足りる場合があります。一方、数字の変動が大きく、今後を予測しにくい会社では、毎月確認する意味があります。
試算表は一枚だけを見るのではなく、月ごとの推移から異常値を探し、元帳で原因を確認します。そのうえで決算時の利益、税金、現預金を予測し、必要な対応を検討します。
試算表を作成していても数字の見方が分からない、決算予測ができない、帳簿残高と実際の残高が合わない場合は、作成頻度だけでなく、記帳方法や確認体制から見直す必要があります。






