「預り金」という科目は、文字どおり会社が一時的に預かっているお金のため、最終的に正しく支払いを済ませなければなりません。
税理士事務所に勤め始めた頃、先輩がこの預り金の残高を丁寧に確認していたことを覚えています。
預り金の残高を確認することは、会社が差し引いたお金を、その後どう処理したかを確かめる重要な作業でもあります。

預り金は、会社が後で納めるお金
給与支払いの際、会社は給与の総額をそのまま振り込むわけでなく、源泉所得税や住民税、社会保険料などを差し引いた残額を振り込みます。
この差し引いた金額は、税務署や自治体などへ納めるまで、その内訳と金額を管理する必要があります。
「預り金」勘定で処理することが一般的ですが、社会保険料などの処理方法には違いもあります。大切なのは、何をいくら差し引き、いつ、どこへ納めるかを管理しておくことです。
預り金の管理は、給与だけではありません。個人に支払う原稿料やデザイン料、税理士などへの報酬も、内容によっては源泉徴収が必要です。
「外注費だから源泉徴収は関係ない」とは判断できません。一方、個人への外注費がすべて対象になるわけでもありません。支払先と仕事の内容を確認する必要があります。
残高が合っていても、安心はできない
預り金の残高を見れば、帳簿に計上した金額について、納付や処理が済んでいるかを確認する手掛かりになります。給与台帳、納付した記録、帳簿の金額が合わなければ、どこで差が出たのかを調べます。
ただし、そもそも帳簿に載っていないものは、残高を見ても分かりません。
たとえば、源泉徴収が必要な報酬を支払ったのに、会社がその対象だと気づかず、報酬の全額を振り込んでいた場合などです。
(請求書に源泉徴収額が記載されていれば気づきやすいものの、記載のない請求書もあります。会社側でも、支払内容から源泉徴収の要否を確認する必要があります。)
つまり、確認すべきことは二つあります。
1. 徴収して帳簿に計上した金額が、正しく納付・精算されているか。
2. 給与や報酬について、源泉徴収すべき支払いを見落としていないか。
会計ソフトでは補助科目の設定が有効
預り金のなかには、源泉所得税や住民税、雇用保険や社会保険料などがあるため、会計ソフトでは補助科目を設定することが有効です。
そして、補助科目ごとにそれぞれの適切なタイミングで計上され、支払いがなされているかを確認します。
「月分」などを摘要に入力することで、漏れやミスの発生を抑え、あるいは気づきやすくします。
税理士に依頼していても、支払内容の把握は会社の仕事
税理士が帳簿や納付記録を確認することはできます。しかし、会社が誰に何の仕事を頼み、どう支払ったかが分からなければ、報酬の源泉徴収が必要かどうかを判断できません。
人を雇い、外部に仕事を依頼するなら、振込だけで事務は終わりません。給与や報酬から何を差し引き、その後どう納めるかまで、会社が把握しておく必要があります。
預り金は、会社・給与や報酬の受取人・納付先をつなぐ勘定科目です。源泉徴収や納付の状況は税務調査で確認されることもありますが、普段から給与台帳・請求書・納付記録と帳簿をつなげておくことが大切です。



